2012/04/04
6. 低炭素・循環型社会の構築
2. 地球温暖化とそれを防止するための世界的な取り組み
2.2 京都議定書以降の温室効果ガス規制の取り組み
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3回作業部会第9回会合(平成19年4月30日~5月4日、於 タイ・バンコク)において、京都議定書以降の温室効果ガス排出規制に関する指針となるべき、IPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、第3作業部会報告書本体が受諾されました。本報告書では、気候変動の緩和策のポテンシャルとコスト、今後の見通しに関する最新の知見が位以下のように取りまとめられています。
ー IPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要 ー
(政府報道発表資料、2007年5月4日より)
SMPの主な内容
温室効果ガス(GHG)の排出量は、産業革命以降増えており、温室効果ガス全体として、1970年から2004年の間に約70%増加した。現状のままで行くと、世界のGHG排出量は、次の数十年も引き続き増加する。
[短・中期的な緩和(~2030)各個別部門]
・2030年を見通した削減可能量は、予測される世界の排出量の伸び率を相殺し、さらに現在の排出量以下にできる可能性がある。2030年における削減可能量は、積み上げ型の研究によると、炭素価格が二酸化炭素換算で1トン当たり20ドルの場合は、年90~170億トン(二酸化炭素換算)であり、炭素価格が同様に100ドルの場合は、年160~310億トン(二酸化炭素換算)である。
・温室効果ガス削減の取り組み組みの結果として大気汚染が緩和されることによる短期的な健康上の利益は、緩和のコストを相当程度相殺するだろう。
・エネルギー供給:途上国へのエネルギー供給に関する新規投資、先進国におけるエネルギーインフラの改修、エネルギー安全保障関連政策によって、温室効果ガス排出量削減の機会がある。将来のエネルギーインフラへの投資に対する意思決定は、温室効果ガスの排出量に長期的な影響を及ぼす。また、エネルギー需要を満たすために、園ルギー供給を増加させるよりも、エネルギー利用効率の向上に投資する方が、費用対効果が大きい。再生可能エネルギーによる電力は、炭素価格が二酸化炭素換算で1トン当たり50米ドルの場合は、2030年の合計電力量の30~35%のシェアを占める可能性があると試算されている。
運輸:自動車の燃費向上は、少なくとも小型自動車では対策を講じたほうがコスト面で有利になり利益を生むこともある。しかし、消費者の自動車購入の判断基準は、燃費だけでないために、必ずしも大幅な排出量削減に結び付かない。
建築:新規及び既存のビルにおける省エネ対策は、コストの削減あるいは経済便益を生み、大幅な温室効果ガス排出量を削減できる可能性があり、コストをかけずに2030年までに予測される温室効果ガス排出量の約30%を削減可能と試算される。
産業:削減ポテンシャルはエネルギー集約型産業に集中している。先進国、途上国ともに、利用可能な緩和オプションが充分利用されていない。
・農業:低コストで全体として大きな貢献が可能である。土壌内炭素吸収量の増加や、バイオエネルギーとして温室効果ガスの排出削減に貢献できる可能性がある。緩和ポテンシャルの大きな部分を占めるのは土壌内炭素吸収の管理による。
・林業:抵コストで、排出量の削減及び吸収源の増加の両方に大きく貢献することが可能。炭素価格が、二酸化炭素換算で1トン当たり100米ドルの場合、緩和ポテンシャルの約65%が熱帯にあり、また約50%が森林減少の削減と劣化の防止により達成可能。
・廃棄物:全体の温室効果ガス排出量に占める割合は小さいものの、低コストでの温室効果ガスの排出削減が可能であり、持続可能な開発も促進する。
[長期的な緩和(2031~)]
大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるためには、排出量は、どこかでピークを迎え、その後減少していかなければならない。安定化レベルが低いほど、このピークとその後の減少を早期に実現しなければならず、今後20~30年間の緩和努力によって、回避することのできる長期的な地球の平均気温の上昇と、それに対応する気候変動の影響の大きさがほぼ決定される。
適切な投資、技術開発などへの適切なインセンティブが提供されれば、安定化レベルは現在実用化されている技術、または今後10年間において実用化される技術の組み合わせにより達成可能である。
2050年において、温室効果ガスを445~710 ppm CO2-eqの間で安定化させた場合のマクロ経済への影響は。世界平均でGDP1%の増加から5.5%の減少までの値を取る。影響は国やセクターにより異なる。
[政策、措置、手法]
温室効果ガスの排出緩和を促すインセンティブを策定するため、各国政府がとりうる国内政策及び手法は多種多様であるが、いずれの手法にも利点と欠点が存在する。規制措置、税金・課徴金、排出権取引制度、自主協定、報的措置、技術研究開発など。実際の、あるいは隠れた炭素価格を設定する政策は、生産者及び消費者における、温室効果ガスの排出が低い製品に対する投資への顕著なインセンティブとなる。こうした政策は、経済的措置、政府の財政支援、規制的措置などを含む。
[持続可能な開発と気候変動の緩和]
開発の道筋を、より持続可能な開発に向けるならば、気候変動の緩和にも大きく貢献する可能性がある。
以上のようなIPCCによる温室効果ガス排出規制や対策などにより、地球温暖化の抑制を図ろうとしているのです。
全世界的、かつ具体的な排出規制の設定には、経済発展が急激で温室効果ガス排出量も先進国並み、あるいはそれ以上に達している中国やインドなどの新興国が参加しなければ意味がないと主張する米国の立場を考慮して、これら新興国を含めて2008年先進国G8洞爺湖サミットが開かれました。主催国である日本および欧州諸国は2050年およびその中間の2025年における全世界の具体的排出規制目標量の設定を求めたが、先に述べたように中国やインドが具体的な規制量の設定に反対したために米国も反対し、具体的な数量を示すには至らなかったのは誠に残念なことです。
地球温暖化防止の国際協力の枠組みを話し合う、2009年の気候変動枠組み締約国際会議(COP15)では産業革命以降からの気温上昇を「2度以内に抑える」ことに合意したものの、具体策では先進国と途上国とが対立し前進しませんでした。2010年のCOP16では温室効果ガス削減に向けて強調して取り組むことを合意しましたが、実質的な前進はCOP17に持ち越されました。COP17では京都議定書の約束期間が2012年末に終わった後、空白期間をつくらないように京都議定書を延長(第2約束期間の設定、13 ~17または20年、ただし日本は延長に応じず)するとともに、20年に米国や中国などの温室効果ガスの大排出国すべてが参加する新しい枠組みをつくることで合意しました。しかしながら、合意の具体化はこれからであり、国連を舞台にした各国の駆け引きをよそに温暖化は着実に進行しており、国際社会の対応は後手に回っているのが実態なのです。
2.2 京都議定書以降の温室効果ガス規制の取り組み
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3回作業部会第9回会合(平成19年4月30日~5月4日、於 タイ・バンコク)において、京都議定書以降の温室効果ガス排出規制に関する指針となるべき、IPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、第3作業部会報告書本体が受諾されました。本報告書では、気候変動の緩和策のポテンシャルとコスト、今後の見通しに関する最新の知見が位以下のように取りまとめられています。
ー IPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要 ー
(政府報道発表資料、2007年5月4日より)
SMPの主な内容
温室効果ガス(GHG)の排出量は、産業革命以降増えており、温室効果ガス全体として、1970年から2004年の間に約70%増加した。現状のままで行くと、世界のGHG排出量は、次の数十年も引き続き増加する。
[短・中期的な緩和(~2030)各個別部門]
・2030年を見通した削減可能量は、予測される世界の排出量の伸び率を相殺し、さらに現在の排出量以下にできる可能性がある。2030年における削減可能量は、積み上げ型の研究によると、炭素価格が二酸化炭素換算で1トン当たり20ドルの場合は、年90~170億トン(二酸化炭素換算)であり、炭素価格が同様に100ドルの場合は、年160~310億トン(二酸化炭素換算)である。
・温室効果ガス削減の取り組み組みの結果として大気汚染が緩和されることによる短期的な健康上の利益は、緩和のコストを相当程度相殺するだろう。
・エネルギー供給:途上国へのエネルギー供給に関する新規投資、先進国におけるエネルギーインフラの改修、エネルギー安全保障関連政策によって、温室効果ガス排出量削減の機会がある。将来のエネルギーインフラへの投資に対する意思決定は、温室効果ガスの排出量に長期的な影響を及ぼす。また、エネルギー需要を満たすために、園ルギー供給を増加させるよりも、エネルギー利用効率の向上に投資する方が、費用対効果が大きい。再生可能エネルギーによる電力は、炭素価格が二酸化炭素換算で1トン当たり50米ドルの場合は、2030年の合計電力量の30~35%のシェアを占める可能性があると試算されている。
運輸:自動車の燃費向上は、少なくとも小型自動車では対策を講じたほうがコスト面で有利になり利益を生むこともある。しかし、消費者の自動車購入の判断基準は、燃費だけでないために、必ずしも大幅な排出量削減に結び付かない。
建築:新規及び既存のビルにおける省エネ対策は、コストの削減あるいは経済便益を生み、大幅な温室効果ガス排出量を削減できる可能性があり、コストをかけずに2030年までに予測される温室効果ガス排出量の約30%を削減可能と試算される。
産業:削減ポテンシャルはエネルギー集約型産業に集中している。先進国、途上国ともに、利用可能な緩和オプションが充分利用されていない。
・農業:低コストで全体として大きな貢献が可能である。土壌内炭素吸収量の増加や、バイオエネルギーとして温室効果ガスの排出削減に貢献できる可能性がある。緩和ポテンシャルの大きな部分を占めるのは土壌内炭素吸収の管理による。
・林業:抵コストで、排出量の削減及び吸収源の増加の両方に大きく貢献することが可能。炭素価格が、二酸化炭素換算で1トン当たり100米ドルの場合、緩和ポテンシャルの約65%が熱帯にあり、また約50%が森林減少の削減と劣化の防止により達成可能。
・廃棄物:全体の温室効果ガス排出量に占める割合は小さいものの、低コストでの温室効果ガスの排出削減が可能であり、持続可能な開発も促進する。
[長期的な緩和(2031~)]
大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるためには、排出量は、どこかでピークを迎え、その後減少していかなければならない。安定化レベルが低いほど、このピークとその後の減少を早期に実現しなければならず、今後20~30年間の緩和努力によって、回避することのできる長期的な地球の平均気温の上昇と、それに対応する気候変動の影響の大きさがほぼ決定される。
適切な投資、技術開発などへの適切なインセンティブが提供されれば、安定化レベルは現在実用化されている技術、または今後10年間において実用化される技術の組み合わせにより達成可能である。
2050年において、温室効果ガスを445~710 ppm CO2-eqの間で安定化させた場合のマクロ経済への影響は。世界平均でGDP1%の増加から5.5%の減少までの値を取る。影響は国やセクターにより異なる。
[政策、措置、手法]
温室効果ガスの排出緩和を促すインセンティブを策定するため、各国政府がとりうる国内政策及び手法は多種多様であるが、いずれの手法にも利点と欠点が存在する。規制措置、税金・課徴金、排出権取引制度、自主協定、報的措置、技術研究開発など。実際の、あるいは隠れた炭素価格を設定する政策は、生産者及び消費者における、温室効果ガスの排出が低い製品に対する投資への顕著なインセンティブとなる。こうした政策は、経済的措置、政府の財政支援、規制的措置などを含む。
[持続可能な開発と気候変動の緩和]
開発の道筋を、より持続可能な開発に向けるならば、気候変動の緩和にも大きく貢献する可能性がある。
以上のようなIPCCによる温室効果ガス排出規制や対策などにより、地球温暖化の抑制を図ろうとしているのです。
全世界的、かつ具体的な排出規制の設定には、経済発展が急激で温室効果ガス排出量も先進国並み、あるいはそれ以上に達している中国やインドなどの新興国が参加しなければ意味がないと主張する米国の立場を考慮して、これら新興国を含めて2008年先進国G8洞爺湖サミットが開かれました。主催国である日本および欧州諸国は2050年およびその中間の2025年における全世界の具体的排出規制目標量の設定を求めたが、先に述べたように中国やインドが具体的な規制量の設定に反対したために米国も反対し、具体的な数量を示すには至らなかったのは誠に残念なことです。
地球温暖化防止の国際協力の枠組みを話し合う、2009年の気候変動枠組み締約国際会議(COP15)では産業革命以降からの気温上昇を「2度以内に抑える」ことに合意したものの、具体策では先進国と途上国とが対立し前進しませんでした。2010年のCOP16では温室効果ガス削減に向けて強調して取り組むことを合意しましたが、実質的な前進はCOP17に持ち越されました。COP17では京都議定書の約束期間が2012年末に終わった後、空白期間をつくらないように京都議定書を延長(第2約束期間の設定、13 ~17または20年、ただし日本は延長に応じず)するとともに、20年に米国や中国などの温室効果ガスの大排出国すべてが参加する新しい枠組みをつくることで合意しました。しかしながら、合意の具体化はこれからであり、国連を舞台にした各国の駆け引きをよそに温暖化は着実に進行しており、国際社会の対応は後手に回っているのが実態なのです。
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