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2009/11/17

5. 日本の進むべき道 -小さな政府か、大きな政府か-

1) 現役世代の意識
この遠大な課題に関して、現在、日本国民、とくに現役世代はどのような選択を意思表示するのか非常に興味あるところです。タイミングよく実施された朝日新聞による世論調査が非常に参考になります(朝日新聞2008年7月24日付)。
これは、現役世代が年金や医療などの社会保障において、みずからの負担と求めるサービスとのバランスをどのように選ぼうとしているかを調査したものです。この調査では、少子高齢化が進んだ未来について「負担が増えても給付の維持・向上を望む」という意見が一定程度あることが浮かび上がっているのです。
その中で、公的年金の内、基礎年金部分(国民年金部分に相当)の財源については、従来の保険料納付率が63%前後であり、社会保険庁の目標の80%以上を大きく下回っており年金制度の崩壊が問題視されています。このような現状の中で、従来通り保険料を徴収する方式がいいのか、民主党や経団連などが主張する税金で賄う方式がいいのかという議論があります。この調査では、「保険料の徴収をやめ、その分、消費税を引き上げて年金の財源にあてる考え方」に対して、賛成が34%、反対が50%と賛成を上回っています。
また、少子高齢化で社会保障財源が不足した場合の確保策については、「サービスの削減」の18%に対して、一番多い答えは「消費税引き上げ」の35%で、続いて所得税・法人税の引き上げの25%でした。
これらの調査結果からも明らかなように、国民の60%が消費税や所得税の高負担による公的福祉サービスの充実を望んでいるのです。小泉や竹中らが主張する小さな政府(小負担)による公的サービスの切り捨てを望んではいないのです。
この調査は、「宙に浮いた5,000万件の年金記録問題」、「社会保険庁の年金積立金の無駄遣い」、「年金記録のコンピュータ入力ミス」、「厚生年金記録台帳保管のずさんさ」、「社会保険庁職員の不正、年金横領」、「組織ぐるみの年金記録改ざん」など、年金制度に対する不信が渦巻く中で行われたものです。

これらの不祥事の多くは、07年度の参議院選挙で与野党が逆転した結果、民主党が中心となって秘密主義であった官僚から国政調査権を発動しながら暴露されたものです。あの参議院での逆転がなければ、国民はこれらの事実を知らせられていなかったのです。
このように、戦後、実質的に一党支配にあった自民党が、みずからの集票マシンである多くの利権集団への税金のバラマキをこれまで60年近くも続けてきたのです。おまけに中央と地方を合わせて800 ~1000兆円に上る借金を作ったのです。その結果、国民負担の割には「公的サービス」としての見返りが少なく、経済大国といわれるほど国民は豊かさや幸せを感じていないのです。むしろ、膨大な借金を背景にして、将来の生活や老後に不安を持っているのが実情なのです。

この膨大な借金の返済、すなわち国債償還費が毎年の国家予算の24%程度を占めるという財政の硬直化があらゆる政策を縛りつけているのです。小泉構造改革で06年度の骨太方針で決定された社会保障費1.1兆円の削減(07年から毎年2,200億円削減し、5年間で1.1兆円)もこれ以上借金を膨らませないように11年度の財政の基礎的収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指したものです。この社会保障費の削減の結果、現実に医師不足や地方の中核病院(公立病院)の倒産・縮小などの医療危機が起こっているのです。

このような日本の政府では国民がいくら高負担しても、本当に北欧諸国で達成されているような高福祉が行われる保証はないのです。上記の朝日新聞による世論調査から言えることは、国民に信頼される政権が樹立されれば、北欧諸国のような高負担・高福祉国家を是とする国民は相当多くなる可能性が高いということではないでしょうか。
09年8月30日の総選挙で政権交代を果たした民主党は、「国民生活第一」、「コンクリートから人へ」をを掲げ、個人消費促進による内需経済に基づく福祉国家を目指しているが、そのためには、いかに国民に信頼される政府を樹立できるかどうかにかかっているのではないでしょうか。
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小泉構造改革の総括と日本の進むべき道 | Comments(0) | Trackback(0)
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