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2009/09/26

4. 小泉構造改革(新自由主義導入)による製造業の弱体化 -9) 「下請けいじめ」による運命共同体の崩壊と技術・ノウハウの消失

輸出中心の大企業の中には、売上高の伸びよりも短期的利益の伸びが堅調な企業が多く、これらは、賃金の高い中高年層の正社員のリストラと非正規社員化、派遣労働者の導入による人件費の削減に加え、「行き過ぎた下請け単価の引き下げ」、いわゆる「下請けいじめ」を実施した結果によるものであることが明らかにされています。

多くの下請けの中小企業で問題となっているのが、大企業による「下請けいじめ」であるが、多くの大企業では行き過ぎた下請け単価の引き下げなどによる製品原価のコストダウンにより短期的利潤を上げたのです。このように大企業は大幅な利益を上げ、昭和の「いざなぎ景気」よりも長期に及んだ「平成の景気」を謳歌した中にあって、労働分配率の低下が毎年続き、大企業の労働者を含めたサラリーマン層や「下請けいじめ」を受けていた中小企業には好況感はなく、むしろ苦しい状態が続いたのです。

世界一の技術力と競争力(生産性)を有する日本の大手製造業は、多くの中小企業の勤勉さや高い技術力によって支えられてきたのです。これらの中小企業の多くは、大企業の下請けとして日本独特の製造業態を形成していたのです。これまでは、大企業は下請けの中小企業の人材育成や技術向上など面倒見もよく、運命共同体としてよき関係が築かれていたが、小泉構造改革により導入された市場原理主義が猛威をふるいだすにつれて、グローバルスタンダードと称し中国での安い製造コストを脅かしのように持ち出して「下請けいじめ」と言われるような「下請け単価」の切り下げが大々的に行われたのです。

事実、小泉構造改革の真っただ中(03~04年)における大企業の業績回復の裏側で下請けへのしわ寄せが広がっていたことが公取発表により裏付けられています(日経新聞2004年6月2日付)。下請けという弱い立場にある上に、中国という強力な競争相手が存在する中で、下請け企業は泣き寝入りをせざるを得ない状況に追いやられたのです。
多くの中小企業は倒産に追い込まれ、それとともに、長い間培われてきた高い技術や貴重なノウハウがこの日本から消失することになったのです。このようなことが繰り返されて、これまでと同様に世界一の技術力と競争力をもつ製造業を長期的に維持・発展させることができるでしょうか。

前にも述べたが、技術力の低下はすぐには際立って現れないが、5 ~10年というタームでみれば、その低下が目に見えて現れてくるものです。そうなれば、もはや取り返しのつかない事態に陥っているのが通常であり、現在は羽振りのいい大企業といえども衰弱の運命を辿るに違いありません。

このように、小泉構造改革による市場原理主義の導入は、資本家(株主)の要求に応えるべく、強者の大企業に対して、人件費コストの大幅削減だけでなく、「下請けいじめ」による行き過ぎた下請け単価に切り下げなどによる製造原価の低減により短期的利潤の極大化を求めたのです。それにより、中小企業の倒産が相次ぎ、長年積み重ねられてきた貴重な技術・ノウハウの消失を招いているのです。
小泉構造改革による新自由主義の導入は短期的利潤をもたらすが、長期的観点に立てば日本の製造業にとって百害あって一利なしの最悪の政策であったと言えるのではないでしょうか。
このことは、新自由主義先進国、米国の衰退した悲惨な製造業をみれば明白なことです。
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小泉構造改革の総括と日本の進むべき道 | Comments(0) | Trackback(0)
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