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2009/06/13

2. 小泉構造改革による社会経済システムの疲弊と崩壊 -1)セーフティネッ ネットの綻び (3) 医療危機 (3)-2 地域中核病院の閉鎖・縮小

医療崩壊に陥っている医療現場は、先に述べたように医師不足による当直続き、長時間労働による過労、医療訴訟やクレームによる精神的疲労など過酷な状況に置かれているのです。その結果、勤務医は病院から逃げ出し、地域の中核病院(主に公立病院)の閉鎖・縮小や休診などが全国各地で起きているのです。
例えば、
i) 北海道: 江別市立病院(408床)(平成17年8月に12人いた内科系医師が2006年9月までに全員退職したため、患者が減り14億円の赤字(毎日新聞2006年11月25日付)。
ii) 新潟県: 阿賀野市立水原郷病院(408床)、医師大量退職、常勤の小児科医1人も新たに退職(毎日新聞 (2006年9月7日付)。
iii) 愛知県: 高浜市立病院(130床) 2006年までに医師18人全員退職、医師不足のために2009年度にも民営化(朝日新聞2008年5月15日付)。
iv) 福岡県: 飯塚市立病院(250床) 2008年4月に開院したが、常勤医を計画の6割しか確保できず、一部診療科を休診(読売新聞2008年8月17日付)。
v) 大阪府: 市立松原病院(221床) 常勤医37人が27人に減り、04年内科、07年に小児科を廃止、病床も162床にスリム化し再建を目指したが、09年春に閉院(朝日新聞2008年11月28日付)。
vi) 京都府: 舞鶴市民病院(236床) 副医院長および内科医全員が退職、市は医療法人「愛明会明石回生病院」への民間委託を事実上断念(毎日新聞2007年3月13日付)。
vii) 千葉県: 銚子市立病院(393床) 2006年同病院の常勤医師数は35人であったが、2007年度には22人に激減、2008年9月末に閉鎖(毎日新聞2008年8月23日付)、その後、再開を望む市民による銚子市長のリコールが成立(産経新聞 2009年3月31日付)。

上記の例に示すように、医師が全員退職するほどの異常事態が、地域医療を担ってきた自治体病院で起こっているのです。このような背景には、前にも述べたように「医師の絶対数不足」という根源的な問題があります。未だに止まらない病院からの医師の流出があり、それに伴い病院勤務医は過労死寸前の過重労働に置かれているという厳しい労働環境にあるのです。
日本において、このような医療危機が急速に現実的になってきたのは、小泉内閣による福祉・医療サービスの切り捨て、特に2011年に国・地方の基礎的財政収支、つまりプライマリーバランスの黒字化に向けて、社会保障費の伸びを2007年から毎年2,200億円の削減を実施してきたことが大きな原因の一つなのです。
日本の医療現場の窮状を回復させるには、OECD加盟国並みの医師の労働条件や人並み生活を守ることが喫緊の課題ではないでしょうか。そのためには、健全な病院経営が成り立つ診療報酬の確保および地域医療に対する政府の財政的措置が必要なのです。国は憲法25条に定められた「健康で文化的な生活を営む権利」を国民に保障する義務があるのではないでしょうか。
しかしながら、福田内閣は、09年度の予算編成の骨子となる「骨太方針08」に、前年度と同様に「社会保障費2,200億円削除」を盛り込み、小泉内閣が決定した構造改革路線「骨太方針06」を踏襲したのです。2011年の国・地方のプライマリーバランスの黒字化に向けて、国民の命にかかわる医療を含めた社会保障費の削減は、現在の医療危機をさらに深刻なものにする危険性があるのです。
自公政権はいつも財源問題を持ち出すが、道路特定財源の一般財源化による財源(5兆6,000億円)のほんの一部、あるいは税の無駄遣いの徹底的な排除による財源を国民の命を守る税策に最優先して支出すれば済むことではないでしょうか。要は、政策の順位づけの問題ではないでしょうか。
そもそも命を預かる医療現場に小泉・竹中構造改革による「公的福祉サービスの切り捨て」という新自由主義(市場原理主義)を持ち込んだところに大きな問題があったのです。後で詳しく述べるが、米国も医療分野に市場原理主義を持ち込んでおり、市場原理による経済合理性を追求したにもかかわらず、米国の医療は日本や欧州の医療に比べて極めて非効率であることがすでに実証されているのです。

自民党政府は財源確保のために社会保障費として目的税化して消費税率アップを目論んでいます。
しかしながら、そのためには「官僚による税の無駄遣い」の徹底的な排除が前提であり、さらに負担に見合う公的福祉サービスが確実に返ってくることを保証する、信頼のおける政府でなければ、国民は負担増を簡単に受け入れないのではないでしょうか。
現状のような政府では、いくら国民が高負担しても「官僚の無駄遣い」にされるのが落ちでしょう。

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小泉構造改革の総括と日本の進むべき道 | Comments(1) | Trackback(0)
Comment
小泉のせいか(?。?
奴を選択した自分等が悪いんやろ。奴が自己責任つーたのは、俺を選択したのはアンタ等さと居直っただけ。年金が崩壊したなんざぁ歴代の自民党政策を選択してきた自分等が悪い。グリーンピアなんぞに突っ込んだ事を容認するようなバカげた政治を許してきた自分等のせい。選挙を何の為にしとるのかね(?。?

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