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2009/05/27

1. 小泉構造改革とその負の遺産 -5) 教育格差

(1) 親の年収による教育格差
文部科学省は公立校へのゆとり教育の導入が子供の著しい学力の低下を招いたとして、急遽ゆとり教育の修正を行っています。学力の低下は、ゆとり教育だけが原因なのでしょうか。
読売新聞の調査によると、親の経済力の差によって子供の学力格差が広がっていると感じている人が75%に上ったということです(読売新聞2006年5月28日付)。子供の教育レベルは「どの親の元に生まれたか」によって大きな格差が生まれ、この格差は子供の最終学歴として具現化されるという大きな問題が提起されているのです。
少子化による学生数の減少により厳しい競争に晒されている私立校では、高額な学費に見合う教育の提供が必須条件であり、現在でもハイレベルな教育水準を維持しています。日本の最高学府である東大に入学するには、遅くとも中学から教育投資を開始しなければならないのです。
このような親の教育ニーズに応えるべく、多くの有名私立高校では中高一貫教育を通じて、ハイレベルな教育を提供できるように中学校を併設している学校が多くなっています。東大をはじめとする難関大学の合格者数で上位を占める私立高校のほとんどは、この中高6年間にわたる継続的、かつ充実した高度教育を提供している中高一貫校なのです。
このようなハイレベルの教育を提供できる私立中学校の入試に合格するには幼稚園や小学校から多額の教育投資が必要であり、授業料や寄付金など高額な教育費負担に耐え得る所得が必要なことは言うまでもありません。このような教育環境下にあっては、所得格差が教育格差および学力格差につながっていくことは自明の理です。
希望の持てる持続可能な社会を維持・向上させるためには、親の経済格差が子どもの教育格差となって固定化されることを絶対に避けなければならないのです。

(2) 世代を超える教育格差の固定
親が低所得で、その子どもが中高一貫校のような難易度の高い教育を受けられないと、東大に代表される難関大学での高いレベルの高等教育も受けられなくなるということが起こります。
日本の子どもがいる世帯の貧困率(すでに述べたように中位可処分所得の50%未満)は14.3%で、OECD加盟国25ヶ国中10位で、ひとり親世帯の貧困率は実に57.3%で、同2位に位置しています(朝日新聞2008年5月28日付)。 例えば、大阪府堺市の生活保護世帯を対象にした調査により、生活保護を受ける世帯の7割が「低学歴」で、しかも生活保護の世帯間継承が4割に達していることが明らかにされています (週刊東洋経済2008年5月7日号)。
このように、親の所得により子どもの教育の機会均等が左右され、それが子どもの最終負学歴として具体的に表れてくるのです。
東京大学在学生の親の05年度の年収と同年の「家計調査」による世帯主の年齢が45 ~54歳の一般世帯の年収階層別の分布をみると、東大生の親の方が、同世代の世帯主の一般世帯に比べて750万円を超える高所得に明らかに多く分布し、特に1,250万円以上の階層では一般世帯との格差が大きくなっています。また、同年度の東京大学在学生の親と一般男子労働者の職業分布の比較から、東大生の親の職業としては、教員を含む専門的・技術的職業従事者および管理的職業従事者に極端に集中しており、同世代の一般男子労働者の職業分布と著しく乖離していることが明らかにされています (東京学芸大学紀要 人文社会学系II 第59集、2008)。
このように、すでに職業や所得で一般世帯とかなり違っており、教育格差が固定化されつつある現状にあるということです。実際に、「多大な教育投資を受け、目出度く東大生となった親の平均年収は1,000万円を超えている世帯が多い」(東大学生生活実態調査)などの調査結果も発表されています。
新自由主義における弱肉強食社会では厳格な市場原理が働くので、社会的ニーズのあるスキルや能力を持っていない非正規労働者は、一度貧困層に陥れば、蟻地獄の如く、這い上がることは極めて困難なのです。このことは、一生、その地位ならびにそれらに見合う所得に固定されることを意味しています。このような所得格差の固定は教育の機会均等を破壊し、「世代を超えた教育格差の固定化」につながる危険性が大きく、最も避けなければならない社会問題なのです。

(3) 教育に対する世界最低レベルの公的支出と世界最高レベルの家庭負担
北欧諸国では高負担であるものの、日本では最も家庭支出額の大きい教育費が小学校から大学まで無料であるということです。
学校教育費における公的支出と私的(家庭)負担のGDP比率(05年度)の国際比較によると、日本はそれぞれ3.4%, 1.5%、米国4.6%, 2.3%、韓国4.3%, 2.9%、イギリス5.0%, 1.2%、ドイツ4.2%, 0.9%、フランス5.6%, 0,5%、デンマーク6.8%, 0.6%、スウェーデン6.2%, 0.2%でした(OECD の「図表でみる教育 2008年度版: Education at a Glance OECD Indicators OECD factbook 2008」)。
学校教育費の公的支出のGDPに対する割合は、日本はOECD諸国の中で最下位グループにあるのに対して、デンマークを始めとする北欧諸国は5.9 ~6.8%という高いGDP比で国家予算が学校教育に投入されているのです。
一方、学校教育における家庭負担をみてみると、GDP比で北欧諸国では0.1 (フィンランド)~ 0.6% (デンマーク)と極めて少ないが、日本では1.5%で、韓国2.9%および米国2.3%に次いで3番目に家庭負担が多い国になっています。
このように、日本の教育に対する公的支出はOECD諸国の中で最下位グループにあり、そのために学校教育に対する日本の家計負担率は極めて高く世界最高レベルに達しているのです。その上に、小泉構造改革によりもたらされた所得格差の拡大が教育格差の拡大や固定化に拍車をかけているのが実態なのです。
日本は少子化に苦しんでいるが、25 ~29歳の妻がいる夫婦を対象にした調査(国立社会保障・人口問題研究所 「第12回出生動向基本調査」)によれば、予定子ども数が理想子ども数を下回る理由として、81.7%が「教育にお金がかかりすぎるから」と回答しています。
実際に、一流企業の部長クラスですら、高校生と大学生からなる3人の子どもがいた場合、教育費の負担のために、極めて家計が苦しいのが実態であることをよく耳にしています。
このことから、教育格差の是正および少子化を食い止めるには、この教育費に対する公的負担を増やし、家庭負担率を大幅に軽減させることが少なくとも必要なことは明らかです。しかしながら、自公政権は政官業癒着による利権政治による道路、公共事業、箱モノ政治と官僚主導による税金の無駄遣いを続けているのです。官僚政治にドップリ浸かっている自公政権は、いくらウマイことを言ってもこれまでの利権政治の根本的な変革は不可能なことは明らかなことです(可能ならば、とっくにできているはず)。それには、まず強固な政官業からなる利権構造を破壊することが必要であり、政権交代が最も効率的、かつ効果的なのではないでしょうか。


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小泉構造改革の総括と日本の進むべき道 | Comments(0) | Trackback(1)
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