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2013/09/30

6. 低炭素・循環型社会の構築

6)農業の再生と環境保全
6)-2 日本農業の現状と食糧調達(食糧自給率の向上)

今後、より深刻になるのは地球温暖化による気候変動により、病虫害の発生、温暖化により従来品種では品質や生産性の低下が起こることが懸念されています。世界的な食糧危機に直面している中にあって、日本の食糧自給率は39%と先進国では最低である上に、食糧生産現場の農村は極めて悲惨な状況にあります。小泉構造改革により地方は切り捨てられ、なお一層の過疎化が進み、限界集落が加速度的に増加しているのが現状です。現在、米消費の減少により、米あまりのために日本の各地に休耕田が広がっており、休耕田の総面積は約39万ヘクタールとほぼ埼玉県と同じ面積に達しています。

食糧自給率の向上、農村をはじめとする地方活性化に向けて危機的な状況として、上記のような農村の過疎化による人口減少に加えて、65際以上の農家が6割に達するという高齢化と後継者不足があります。このままでは、日本の人口減少に加え食生活の変化により、米消費量は今の約900万トンから2050年には350万トン前後に減り、水田も50万ヘクタールに減少し、さらに休耕田が増加する可能性があるとされています。
水田を始めとする農業の効用としては、食糧生産だけでなく、環境保全などの多面的機能があるとされています。特に、水田は、土壌流出を防止し、生物の多様性を守る「環境にやさしい農業」とされ、周辺の気温上昇を抑制する効果があることも確認されています。四季、特に夏季の広々と緑深く茂った稲、秋には秋茜が舞う黄金色の穂をつけた稲の絨毯などの水田の風景は日本人のこころに安らぎを与えるものではないでしょうか。

地球温暖化が深刻化すれば、現在のようにいつまでも世界から必要な食糧を調達できるとは限らないこと、また日本経済の衰退による経済力の低下により中国やインドなどの経済発展国との間での食糧争奪戦において、すでに買い負けが起こっていると言われています。
世界経済のグローバル化は中国やインドなどの新興国(BRICS)における急激な経済成長をもたらし、穀物の輸出国から輸入国へと移行しています。また、米国ではガソリンに代替可能なバイオ燃料としてトウモロコシからバイオエタノールの生産による穀物の供給量減少、それに加えて原油の急騰およびサブプライムローンから流れ込んだ投機マネーにより、食糧である穀物および家畜飼料が一時高騰しました。

日本農業の生産コストが高く、これまで外国産農産品に対してコスト競争力がなかったのが、日本農業衰退の大きな原因の一つでしたが、このような世界的な穀物の高騰や中国などの新興国や東南アジアの高い経済成長により、日本農業の環境も少しずつ改善されつつあります。たとえば、日本の品質が高く、安全でおいしい米は価格が高くても中国や東南アジアに受け入れられる環境になっています。また、休耕田は、再生可能エネルギーである太陽光発電用パネル設置に転用されつつありますが、一方では休耕田を利用して、飼料用米の生産が行われるようになってきています。政府も補助金によるこの流れを支援しています。現状では、政府からの補助金による農機具購入が可能であるため、価格の高騰した外国産飼料に太刀打ちできる程度のコストで飼料用米の生産が可能になっています。
休耕田がこのような飼料用米の生産に活用されれば、環境保全だけでなく、日本の食糧自給率向上にも貢献し、食糧も満足に調達できない低開発国における食糧危機にも貢献するものとして期待されるのではないでしょうか。

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小泉構造改革の総括と日本の進むべき道 | Comments(0) | Trackback(0)
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