2011/12/24
5. 日本の進むべき道 ー 小さな政府か、大きな政府か -
6) 北欧諸国のような高負担・高福祉国家に不可欠な条件
日本には、北欧諸国のような高負担・高福祉政策を導入することが困難な理由として3つぐらい挙げられます。
第一に、英国は「ゆりかごから墓場まで」といわれるような高福祉国家を標榜し、いわゆる「英国病」に陥っていましたが、サッチャー首相による新自由主義の導入により、格差拡大や医療危機などの副作用があったものの経済は活性化しました。この英国の例にあるように、高福祉政策は国民を怠惰にし、また市場の活性化を奪うことから、日本に北欧型の高福祉・高福祉政策を導入することは無理であると考える識者が多い。しかしながら、前述したように北欧諸国の高負担・高福祉政策は、決して国民の活力や市場の活性化を奪うことなく、日本や米国以上に経済成長力が高く、07年度の一人当たりの名目GDPもノルウェーが世界第2位であり、北欧諸国はほとんどトップテンに入っています。北欧諸国の国民は、高負担であるが、生活、医療および老後にほとんど不安なく生活できるので、日本のように消費を控えて高い貯蓄により生活防衛しなくてもよく、可処分所得のほとんどを消費に回すことができるのです。このことが、①内需経済が堅実に活性化しょ高い経済成長維持に貢献していること、さらに先に述べたように、完全なセーフティネットによるゆとりと安心感のある社会、高度な教育環境が、②産官学連携による技術革新(イノベーション)を活性化し、世界標準たる技術の確立、それを基盤とした競争力(たとえばフィンランドにおけるデキタル携帯電話のNOKIAやスウェーデンにおけるバイオやファインケミカルによる医薬品開発)のある外需経済にあると考えられます。
このような北欧諸国の状況は、リスクを恐れない絶え間ないイノベーションにより、競争力のある外需経済により経済成長してきました。かつての技術創造立国、日本と重なるところがあるのではないでしょうか。決して、北欧諸国は、日本の国情、風土とはかけ離れたものではなく、日本の再生には、北欧諸国と同様に、小泉構造改革前の日本、すなわち固定費である人件費の削減ではなくイノベーションによる競争力のある日本経済の原点に帰る以外にないのではないでしょうか。新自由主義者らが主張するように、市場原理によりいくら労働力コストを切り下げても、人件費が日本の1/10~1/20である中国やインドのような新興国と太刀打ちできるものではなく、かえって日日本経済を疲弊させるだけです。フィンランドにみられるように世界標準になるイノベーションを通じてしか日本は生き残れないのであり、日本の強みである技術創造立国としての原点に戻ることではないでしょうか。
第二に、フィンランド、デンマークおよびスウェーデンの面積は日本とほぼ同じであるが、2000年度における人口はそれぞれ518万人、529万人および891万人であるのに対して日本は1億2,693万人であり、日本のような人口の多い国では高負担・高福祉政策は成立し得ないとするものです。
代表的な新自由主義者の竹中は北欧諸国と比べて日本の人口が極端に多いので、北欧諸国のような高負担・高福祉政策を導入することは困難であると主張しています。人口が多いために個々人の所得などを正確に把握できないことなどを一つの理由に挙げていますが、本当の理由はよくわかりません。所得把握や負担と給付の関係が明確でないというのが問題であれば、米国のsocial security numberのような国民総背番号制を導入すれば済むことではないでしょうか。現状のように、政府に対する信頼がない状況での国民総背番号制の導入は、国民の抵抗が大きいことは確かですが、信頼のおける政府が樹立されれば、その導入も可能であると考えられます。
第三に、これが最もまともな理由ではないかと思われるのですが、国民と政府の信頼関係が日本では完全に崩壊していることではないでしょうか。高負担・高福祉の北欧諸国では、政治情勢が安定しており、国民は政府を信頼し、高負担が高福祉として自分に返ってくることを実感しているのです。官僚の不正は、国民の暴動も誘発されるほど、国民に厳しく監視され、一方、政府は透明化を高めて国民からの信頼を得ているのです。
日本では、国民は政府、特に官僚は、国家・国民の利益や発展には目もくれず、省益や自らの利権に汲々としており、社会保険庁における不正などは氷山の一角であることをよく知っているのです。国民が政府を信頼していないことが北欧諸国のような高負担・高福祉政策を導入できない最大の障害ではないでしょうか。多分、多くの国民は、高負担しても高福祉としての見返りがなく、高給官僚の天下りに利用され、税金が無駄遣いされるだけであると思っているに違いないのです。
日本の現役世代において、社会保険庁における多くの不正などが明るみに出た後での世論調査であるにもかかわらず、現役世代の60%が消費税や所得税の高負担による公的福祉サービスの充実を望んでいる現状にあるのです(朝日新聞2008年7月24日付)。政権交代されたが昔の自民党政権と同じであり、国民と政府との信頼関係樹立は絶望的な状況にあります。今後は政界再編成や抜本的な行政改革などにより、国民に信頼される政府が樹立されれば、高負担・高福祉国家を是とする国民層が飛躍的に多くなると予想されるのです。
竹中らの新自由主義者のいうように、日本のような人口の多い大きな国では成り立たないとする理由は全く根拠もなく、小泉構造改革を導入した時と同じように国民をペテンに嵌めるための主張以外のなにものでもないのです。決して耳を傾けるべきではありません。
日本には、北欧諸国のような高負担・高福祉政策を導入することが困難な理由として3つぐらい挙げられます。
第一に、英国は「ゆりかごから墓場まで」といわれるような高福祉国家を標榜し、いわゆる「英国病」に陥っていましたが、サッチャー首相による新自由主義の導入により、格差拡大や医療危機などの副作用があったものの経済は活性化しました。この英国の例にあるように、高福祉政策は国民を怠惰にし、また市場の活性化を奪うことから、日本に北欧型の高福祉・高福祉政策を導入することは無理であると考える識者が多い。しかしながら、前述したように北欧諸国の高負担・高福祉政策は、決して国民の活力や市場の活性化を奪うことなく、日本や米国以上に経済成長力が高く、07年度の一人当たりの名目GDPもノルウェーが世界第2位であり、北欧諸国はほとんどトップテンに入っています。北欧諸国の国民は、高負担であるが、生活、医療および老後にほとんど不安なく生活できるので、日本のように消費を控えて高い貯蓄により生活防衛しなくてもよく、可処分所得のほとんどを消費に回すことができるのです。このことが、①内需経済が堅実に活性化しょ高い経済成長維持に貢献していること、さらに先に述べたように、完全なセーフティネットによるゆとりと安心感のある社会、高度な教育環境が、②産官学連携による技術革新(イノベーション)を活性化し、世界標準たる技術の確立、それを基盤とした競争力(たとえばフィンランドにおけるデキタル携帯電話のNOKIAやスウェーデンにおけるバイオやファインケミカルによる医薬品開発)のある外需経済にあると考えられます。
このような北欧諸国の状況は、リスクを恐れない絶え間ないイノベーションにより、競争力のある外需経済により経済成長してきました。かつての技術創造立国、日本と重なるところがあるのではないでしょうか。決して、北欧諸国は、日本の国情、風土とはかけ離れたものではなく、日本の再生には、北欧諸国と同様に、小泉構造改革前の日本、すなわち固定費である人件費の削減ではなくイノベーションによる競争力のある日本経済の原点に帰る以外にないのではないでしょうか。新自由主義者らが主張するように、市場原理によりいくら労働力コストを切り下げても、人件費が日本の1/10~1/20である中国やインドのような新興国と太刀打ちできるものではなく、かえって日日本経済を疲弊させるだけです。フィンランドにみられるように世界標準になるイノベーションを通じてしか日本は生き残れないのであり、日本の強みである技術創造立国としての原点に戻ることではないでしょうか。
第二に、フィンランド、デンマークおよびスウェーデンの面積は日本とほぼ同じであるが、2000年度における人口はそれぞれ518万人、529万人および891万人であるのに対して日本は1億2,693万人であり、日本のような人口の多い国では高負担・高福祉政策は成立し得ないとするものです。
代表的な新自由主義者の竹中は北欧諸国と比べて日本の人口が極端に多いので、北欧諸国のような高負担・高福祉政策を導入することは困難であると主張しています。人口が多いために個々人の所得などを正確に把握できないことなどを一つの理由に挙げていますが、本当の理由はよくわかりません。所得把握や負担と給付の関係が明確でないというのが問題であれば、米国のsocial security numberのような国民総背番号制を導入すれば済むことではないでしょうか。現状のように、政府に対する信頼がない状況での国民総背番号制の導入は、国民の抵抗が大きいことは確かですが、信頼のおける政府が樹立されれば、その導入も可能であると考えられます。
第三に、これが最もまともな理由ではないかと思われるのですが、国民と政府の信頼関係が日本では完全に崩壊していることではないでしょうか。高負担・高福祉の北欧諸国では、政治情勢が安定しており、国民は政府を信頼し、高負担が高福祉として自分に返ってくることを実感しているのです。官僚の不正は、国民の暴動も誘発されるほど、国民に厳しく監視され、一方、政府は透明化を高めて国民からの信頼を得ているのです。
日本では、国民は政府、特に官僚は、国家・国民の利益や発展には目もくれず、省益や自らの利権に汲々としており、社会保険庁における不正などは氷山の一角であることをよく知っているのです。国民が政府を信頼していないことが北欧諸国のような高負担・高福祉政策を導入できない最大の障害ではないでしょうか。多分、多くの国民は、高負担しても高福祉としての見返りがなく、高給官僚の天下りに利用され、税金が無駄遣いされるだけであると思っているに違いないのです。
日本の現役世代において、社会保険庁における多くの不正などが明るみに出た後での世論調査であるにもかかわらず、現役世代の60%が消費税や所得税の高負担による公的福祉サービスの充実を望んでいる現状にあるのです(朝日新聞2008年7月24日付)。政権交代されたが昔の自民党政権と同じであり、国民と政府との信頼関係樹立は絶望的な状況にあります。今後は政界再編成や抜本的な行政改革などにより、国民に信頼される政府が樹立されれば、高負担・高福祉国家を是とする国民層が飛躍的に多くなると予想されるのです。
竹中らの新自由主義者のいうように、日本のような人口の多い大きな国では成り立たないとする理由は全く根拠もなく、小泉構造改革を導入した時と同じように国民をペテンに嵌めるための主張以外のなにものでもないのです。決して耳を傾けるべきではありません。
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