2011/11/22
5. 日本の進むべき道 -小さな政府か、大きな政府か -
4) 大きな政府、北欧諸国の実態
4-3) ODA貢献度
2010年度のODA貢献度である途上国援助(ODA) の国民総所得(GNI)に占める割合は、以下のようになる見通しであることが、OECDの開発援助委員会(DAC)の試算で明らかにされています。
[2010年のODA貢献度]
ベスト
1位 スウェーデン、ノルウェー 1.00(%)
2位 ルクセンブルグ 0.93
4位 デンマーク 0.80
6位 オランンダ 0.70
平均 0.55
ワースト
1位 日本、米国 0.19
3位 カナダ 0.30
4位 ニュージランド 0.33
5位 ギリシア 0.35
これからも明らかなように、日本と米国のODA貢献度は加盟国22ケ国の中で、米国と並んで最下位になる見通しであるということです。しかしながら、高負担・高福祉政策を採用している北欧のスウェーデンおよびノルウェーのODA貢献度は世界1位であり、デンマークが4位です。国連は各国のGNI比率を0.7%とする目標を掲げており、上位にあるほとんどの北欧諸国はすでにクリアしていますが、新自由主義をとっている日米は、その目標に遠く及ばない状況にあるのです。このODA貢献度から明らかなように、多くの日米のエコノミストや知識人が指摘しているのとは異なり、高負担・高福祉政策を採用していても、北欧諸国の方が国債貢献度は高いのです。北欧諸国における経済運営は、新自由主義をとっている日米よりうまくいっており、途上国援助も十分行える状況にあることを示しています。
5) 日本国民は日本の進路を自らの意志で選択すべき
漸く日本にも、民主党および自由民主党という政権交代可能な二大政党が育ってきた。しかしながら、両党間の政策に大きな差異はなく、このまま政権交代しても日本の政治の流れに大きな変化は望めません。民主党には、自民党よりも小泉や竹中らによる新自由主義的構造改革に対してより積極的で、かつこれまでの小泉構造改革はまだまだ生ぬるい、未達成としてより強力な構造改革を推進しようとする若手政治家を中心とする勢力があり、未だに小泉元首相との接触を密にしています。実際に、小泉内閣による、いわゆる小泉構造改革に積極的に賛同したのは民主党に他ならないのです。
その好例として、日雇い派遣労働の全面禁止の問題が議論されていますが、日雇い労働者は07年度には1日約5万1,000人に上っています。この流れは、止まることなく加速し、格差拡大や少子化加速の要因として注目され、日雇い派遣労働をめぐる世論は厳しさを増しています。厚生労働省の有識者会議では、この日雇い派遣労働が、格差拡大、不安定な雇用環境、非正規社員の急増、ワーキングプアやネットカフェ難民などの新しい貧困層の発生などの大きな原因となっているとして全面的な禁止を提起しています。このような状況から自民党は経営側の抵抗があるものの、従来の派遣労働法の規制基準、すなわち派遣労働を専門職以外の日雇い派遣労働を全面禁止する方向に進んでいます。しかしながら、民主党は、当初、このような日雇い派遣労働の全面的禁止ではなく、部分的な禁止に留めようとしていました(民主党も社会党との話し合いの結果、野党合意の派遣労働の全面禁止に方向転換)。「国民の生活が第一」とする民主党のスローガンとは全く異なる政策を取ろうとしていたのです。これに対する自民党の流れは、小泉構造改革の「負の遺産」があまりにも大きな社会的問題を引き起こしていることから、小泉構造改革からの脱却を指向していたのです。やはり自民党には、いろいろ異なる意見はあっても、さすがに最終的には一つの結論に集約するという大人の論理が働いています。これが、政権党として日本国民に信頼され、戦後60年という長期にわたり、実質的に一党支配をしてきた理由の一つであると思われます。これに反して、民主党は非常に幼く、バラバラでガバナンスに欠け、未だに小泉構造改革をさらに推進し、構造改革の後退は許さないという大きな勢力(多くはTPP推進派)が存在するのです。それにもかかわらず、「国民の生活が第一」というスローガンとは異なった政策を掲げても矛盾を感じていないのです。「国民の生活が第一」と主張するなら、「小泉構造改革の国民生活における負の遺産」を早急に総括し、是正すべき政策をマニフェストに掲げるべきですが、そのような活動は民主党内には皆無なのです。それは、民主党が小泉構造改革を積極的に支援してきたので、いまさら小泉構造改革を総括し、批判することは自己矛盾、あるいは自己否定となるからなのでしょう。
小泉構造改革による多くの「負の遺産」、それらによる「国民生活の困窮」や「経済社会システムの崩壊」などを総括して、日本国民は今後の日本の進路として、①「低福祉、低負担」、「小さな政府と公的福祉サービスの切り捨て」、「弱肉強食社会」なのか、②「高負担、高福祉」、「大きな政府と高い福祉サービス社会」、あるいは③その定義が不明確で曖昧ながらも、その中間の「中負担、中福祉」を選択するのかを意思表示すべき段階に来ているのではないでしょうか。
上述したように、米国型製剤社会は地さな政府を目指し、それに伴い公的サービスの切り捨て、公的規制のの大幅な緩和による市場原理主義による弱肉強食社会を指向している新自由主義経済社会です。この苛酷な競争社会では、少数の強者はさらに強者となり、大多数は弱者となって転落する社会であり、いま若者を中心として大々的に米国で行われている反格差デモ「ウォール街を占拠せよ」で示されているように格差拡大を容認する社会と言えます。いまや、この反格差デモは米国から世界に広がっています。新自由主義社会は、ある側面では活気のある市場メカニズムに基づいた効率的かつ合理的な競争社会であるともいえるのです。
一方、「高負担、高福祉」、すなわち「大きな政府と高い公的サービス社会」の代表格は、これまで述べてきたスウェーデンやデンマークなどの北欧諸国の社会です。北欧諸国は米国とは正反対の高負担(大きな政府)と高福祉社会(高い公的福祉サービス)、すなわち社会民主主義社会を選択しているのです。その大きな特徴の一つは、無制限な競争を公的規制し、利潤の低下をある程度甘受しながら負の部分をできる限り排除する規制資本主義経済社会といえるところにあります。
日本国民は少子高齢化社会を迎え、今後の日本社会の進路としてどちらの社会を選択するのかを一日も早く意思表示すべきです。しかしながら、現実の政治をみると、民主党および自民党には、小泉構造改革推進派(いわゆる上げ潮派とよばれる集団、多くはTPP推進派)と反小泉構想改革派(多くはばTPP慎重派)がそれぞれ混在しており、国民に選択させるべき日本の今後の進路に関する政策において両党間には大きな違いがないのが実情です。特に問題なのは、国民の期待とは異なり、民主党は「国民の生活が第一」をスローガンに掲げているにもかかわらず、小泉構造改革を総括するとともに、それからの脱却を明確にマニフェストで宣言できないところに大きな矛盾を孕んでいます。
このような政治状況下にあって、国民が期待していた民主党が政権をとった現状でも、日本の閉塞状況はほとんどかわらず、明るい日本の展望は開けていません。できることなら、次の総選挙前に民自両党ともカラガラポンして、上述のような日本の今後の進路を対立軸として再編成された二大勢力間(政党間)で、国民に分かりやすい選択肢を提供すべきではないでしょうか。
4-3) ODA貢献度
2010年度のODA貢献度である途上国援助(ODA) の国民総所得(GNI)に占める割合は、以下のようになる見通しであることが、OECDの開発援助委員会(DAC)の試算で明らかにされています。
[2010年のODA貢献度]
ベスト
1位 スウェーデン、ノルウェー 1.00(%)
2位 ルクセンブルグ 0.93
4位 デンマーク 0.80
6位 オランンダ 0.70
平均 0.55
ワースト
1位 日本、米国 0.19
3位 カナダ 0.30
4位 ニュージランド 0.33
5位 ギリシア 0.35
これからも明らかなように、日本と米国のODA貢献度は加盟国22ケ国の中で、米国と並んで最下位になる見通しであるということです。しかしながら、高負担・高福祉政策を採用している北欧のスウェーデンおよびノルウェーのODA貢献度は世界1位であり、デンマークが4位です。国連は各国のGNI比率を0.7%とする目標を掲げており、上位にあるほとんどの北欧諸国はすでにクリアしていますが、新自由主義をとっている日米は、その目標に遠く及ばない状況にあるのです。このODA貢献度から明らかなように、多くの日米のエコノミストや知識人が指摘しているのとは異なり、高負担・高福祉政策を採用していても、北欧諸国の方が国債貢献度は高いのです。北欧諸国における経済運営は、新自由主義をとっている日米よりうまくいっており、途上国援助も十分行える状況にあることを示しています。
5) 日本国民は日本の進路を自らの意志で選択すべき
漸く日本にも、民主党および自由民主党という政権交代可能な二大政党が育ってきた。しかしながら、両党間の政策に大きな差異はなく、このまま政権交代しても日本の政治の流れに大きな変化は望めません。民主党には、自民党よりも小泉や竹中らによる新自由主義的構造改革に対してより積極的で、かつこれまでの小泉構造改革はまだまだ生ぬるい、未達成としてより強力な構造改革を推進しようとする若手政治家を中心とする勢力があり、未だに小泉元首相との接触を密にしています。実際に、小泉内閣による、いわゆる小泉構造改革に積極的に賛同したのは民主党に他ならないのです。
その好例として、日雇い派遣労働の全面禁止の問題が議論されていますが、日雇い労働者は07年度には1日約5万1,000人に上っています。この流れは、止まることなく加速し、格差拡大や少子化加速の要因として注目され、日雇い派遣労働をめぐる世論は厳しさを増しています。厚生労働省の有識者会議では、この日雇い派遣労働が、格差拡大、不安定な雇用環境、非正規社員の急増、ワーキングプアやネットカフェ難民などの新しい貧困層の発生などの大きな原因となっているとして全面的な禁止を提起しています。このような状況から自民党は経営側の抵抗があるものの、従来の派遣労働法の規制基準、すなわち派遣労働を専門職以外の日雇い派遣労働を全面禁止する方向に進んでいます。しかしながら、民主党は、当初、このような日雇い派遣労働の全面的禁止ではなく、部分的な禁止に留めようとしていました(民主党も社会党との話し合いの結果、野党合意の派遣労働の全面禁止に方向転換)。「国民の生活が第一」とする民主党のスローガンとは全く異なる政策を取ろうとしていたのです。これに対する自民党の流れは、小泉構造改革の「負の遺産」があまりにも大きな社会的問題を引き起こしていることから、小泉構造改革からの脱却を指向していたのです。やはり自民党には、いろいろ異なる意見はあっても、さすがに最終的には一つの結論に集約するという大人の論理が働いています。これが、政権党として日本国民に信頼され、戦後60年という長期にわたり、実質的に一党支配をしてきた理由の一つであると思われます。これに反して、民主党は非常に幼く、バラバラでガバナンスに欠け、未だに小泉構造改革をさらに推進し、構造改革の後退は許さないという大きな勢力(多くはTPP推進派)が存在するのです。それにもかかわらず、「国民の生活が第一」というスローガンとは異なった政策を掲げても矛盾を感じていないのです。「国民の生活が第一」と主張するなら、「小泉構造改革の国民生活における負の遺産」を早急に総括し、是正すべき政策をマニフェストに掲げるべきですが、そのような活動は民主党内には皆無なのです。それは、民主党が小泉構造改革を積極的に支援してきたので、いまさら小泉構造改革を総括し、批判することは自己矛盾、あるいは自己否定となるからなのでしょう。
小泉構造改革による多くの「負の遺産」、それらによる「国民生活の困窮」や「経済社会システムの崩壊」などを総括して、日本国民は今後の日本の進路として、①「低福祉、低負担」、「小さな政府と公的福祉サービスの切り捨て」、「弱肉強食社会」なのか、②「高負担、高福祉」、「大きな政府と高い福祉サービス社会」、あるいは③その定義が不明確で曖昧ながらも、その中間の「中負担、中福祉」を選択するのかを意思表示すべき段階に来ているのではないでしょうか。
上述したように、米国型製剤社会は地さな政府を目指し、それに伴い公的サービスの切り捨て、公的規制のの大幅な緩和による市場原理主義による弱肉強食社会を指向している新自由主義経済社会です。この苛酷な競争社会では、少数の強者はさらに強者となり、大多数は弱者となって転落する社会であり、いま若者を中心として大々的に米国で行われている反格差デモ「ウォール街を占拠せよ」で示されているように格差拡大を容認する社会と言えます。いまや、この反格差デモは米国から世界に広がっています。新自由主義社会は、ある側面では活気のある市場メカニズムに基づいた効率的かつ合理的な競争社会であるともいえるのです。
一方、「高負担、高福祉」、すなわち「大きな政府と高い公的サービス社会」の代表格は、これまで述べてきたスウェーデンやデンマークなどの北欧諸国の社会です。北欧諸国は米国とは正反対の高負担(大きな政府)と高福祉社会(高い公的福祉サービス)、すなわち社会民主主義社会を選択しているのです。その大きな特徴の一つは、無制限な競争を公的規制し、利潤の低下をある程度甘受しながら負の部分をできる限り排除する規制資本主義経済社会といえるところにあります。
日本国民は少子高齢化社会を迎え、今後の日本社会の進路としてどちらの社会を選択するのかを一日も早く意思表示すべきです。しかしながら、現実の政治をみると、民主党および自民党には、小泉構造改革推進派(いわゆる上げ潮派とよばれる集団、多くはTPP推進派)と反小泉構想改革派(多くはばTPP慎重派)がそれぞれ混在しており、国民に選択させるべき日本の今後の進路に関する政策において両党間には大きな違いがないのが実情です。特に問題なのは、国民の期待とは異なり、民主党は「国民の生活が第一」をスローガンに掲げているにもかかわらず、小泉構造改革を総括するとともに、それからの脱却を明確にマニフェストで宣言できないところに大きな矛盾を孕んでいます。
このような政治状況下にあって、国民が期待していた民主党が政権をとった現状でも、日本の閉塞状況はほとんどかわらず、明るい日本の展望は開けていません。できることなら、次の総選挙前に民自両党ともカラガラポンして、上述のような日本の今後の進路を対立軸として再編成された二大勢力間(政党間)で、国民に分かりやすい選択肢を提供すべきではないでしょうか。
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