2011/06/07
5. 日本の進むべき道 -小さな政府か、大きな政府か -
4) 大きな政府、北欧諸国の実態
4-2) 北欧諸国の経済
3) 手厚い福祉政策
どうして、北欧諸国は高負担であるのに、国民の働く意欲が高く、米国以上の高い経済成長を達成できるのでしょか。それは、手厚い福祉政策にあり、国民は無理に教育、育児、子育てや老後に必要な資金を蓄える必要がなく、高負担後に残る可処分所得をすべて消費に回しても困らないこと、この国民による積極的な消費が根強い内需経済を支え着実な経済成長を達成しているのではないでしょうか。
そこで、次に北欧諸国の各種福祉政策について見てみることにします。
①学校教育
北欧諸国では高負担であるものの、日本では最も家庭支出額の大きい教育費が小学校から大学まで無料であるということです。学校教育費の公的支出のGDPに対する割合は、ノルウェーは65%, 米国5.1%, 日本3.5%で、日本はOECD諸国の中でも最下位グループにあるのに対して、ノルウェーを始めとする北欧諸国は6.0~6.9%と高いGDP比率で国家予算が学校教育に投入されているのです(OECD Education at a Glance 2007, OECD Factbook 2007)。北欧諸国は国土がほぼ日本と同じくらいの国が多く、日本と同様に無資源国であるので人的資源に力を入れていることがわかります。
日本のここ10~20年間の経済停滞(失われた10年、あるいは20年とも呼ばれているが)日本経済を支える科学技術におけるイノベーションの停滞は、おそらく日本が人的資源への投資を怠ってきたことによることに他ならないことが、北欧諸国における学校教育にかける意気込みの差からも明確になったように思われます。
一方、学校教育における私的負担を見てみると、GDP比で北欧諸国では0.1(ノルウェー、フィンランド)~0.3% (デンマーク)と極めて少ないが、日本は1.2%で、韓国(2.8%)および米国(2.3%)についで、3番目に私的負担の多い国になっており(同資料)、教育費にカネがかかることが頷けるところです。米国は多民族・移民国家であり状況は異なるが、日本や韓国においては、この教育における過度な私的負担が少子化の原因の一つになっているのです。
②育児制度
北欧諸国の育児支援制度の特徴は、出生以前、つまり妊娠中からケアが始まるというほど行き届いているところにあります。
例えば、ノルウェーにおける育児支援制度を見てみると、
a) 育児休暇および児童手当:2007年時点で育児休暇期間は、出産前12週間で、その内3週間は義務、産後6週間(義務)、育児休暇として満3歳まで(54集までは両親で分割可能 + 両親で1年ずつ)という手厚い育児支援制度があります。また、育児中は出産前の賃金の80~100%が支給されます(80%給付x54週、あるいは100%給付x44週を選択可能)。また、育児休暇としてノルウェー独自のパパクオータ制度があり、父親に6週間の育児休暇(取得しなければ有給の休業期間が短縮される)が割り当てられています(ニッセイ基礎研究所「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」平成20年)。
b) 保育施設:ノルウェーには6,000以上のデイケアセンターがあり、1~5歳の子供を約80%カバーしています。また、1~3歳の子供をデイケアセンターに預けず在宅で育てる場合には、最大で年間約97万円強が支給されます。
このように日本では考えられない手厚い育児制度により、ノルウェーでは一時(2002年および2003年の)合計特殊出生率は1.80を切っていたが、2004年および2005年にはそれぞれ1.83および1.84まで回復しています。それに比べて、日本の合計特殊出生率は1990年1.54から2002年1.32, 2005年1.26までほぼ一直線で低下しており、日本の少子化は非常に深刻な状況にあるのです(人口問題研究 64-3, 2008. 9, pp. 122-129)。日本の少子化は、ノルウェーの育児支援制度に比べて極めて貧弱なことから当然の結果ではないでしょうか。
4-2) 北欧諸国の経済
3) 手厚い福祉政策
どうして、北欧諸国は高負担であるのに、国民の働く意欲が高く、米国以上の高い経済成長を達成できるのでしょか。それは、手厚い福祉政策にあり、国民は無理に教育、育児、子育てや老後に必要な資金を蓄える必要がなく、高負担後に残る可処分所得をすべて消費に回しても困らないこと、この国民による積極的な消費が根強い内需経済を支え着実な経済成長を達成しているのではないでしょうか。
そこで、次に北欧諸国の各種福祉政策について見てみることにします。
①学校教育
北欧諸国では高負担であるものの、日本では最も家庭支出額の大きい教育費が小学校から大学まで無料であるということです。学校教育費の公的支出のGDPに対する割合は、ノルウェーは65%, 米国5.1%, 日本3.5%で、日本はOECD諸国の中でも最下位グループにあるのに対して、ノルウェーを始めとする北欧諸国は6.0~6.9%と高いGDP比率で国家予算が学校教育に投入されているのです(OECD Education at a Glance 2007, OECD Factbook 2007)。北欧諸国は国土がほぼ日本と同じくらいの国が多く、日本と同様に無資源国であるので人的資源に力を入れていることがわかります。
日本のここ10~20年間の経済停滞(失われた10年、あるいは20年とも呼ばれているが)日本経済を支える科学技術におけるイノベーションの停滞は、おそらく日本が人的資源への投資を怠ってきたことによることに他ならないことが、北欧諸国における学校教育にかける意気込みの差からも明確になったように思われます。
一方、学校教育における私的負担を見てみると、GDP比で北欧諸国では0.1(ノルウェー、フィンランド)~0.3% (デンマーク)と極めて少ないが、日本は1.2%で、韓国(2.8%)および米国(2.3%)についで、3番目に私的負担の多い国になっており(同資料)、教育費にカネがかかることが頷けるところです。米国は多民族・移民国家であり状況は異なるが、日本や韓国においては、この教育における過度な私的負担が少子化の原因の一つになっているのです。
②育児制度
北欧諸国の育児支援制度の特徴は、出生以前、つまり妊娠中からケアが始まるというほど行き届いているところにあります。
例えば、ノルウェーにおける育児支援制度を見てみると、
a) 育児休暇および児童手当:2007年時点で育児休暇期間は、出産前12週間で、その内3週間は義務、産後6週間(義務)、育児休暇として満3歳まで(54集までは両親で分割可能 + 両親で1年ずつ)という手厚い育児支援制度があります。また、育児中は出産前の賃金の80~100%が支給されます(80%給付x54週、あるいは100%給付x44週を選択可能)。また、育児休暇としてノルウェー独自のパパクオータ制度があり、父親に6週間の育児休暇(取得しなければ有給の休業期間が短縮される)が割り当てられています(ニッセイ基礎研究所「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」平成20年)。
b) 保育施設:ノルウェーには6,000以上のデイケアセンターがあり、1~5歳の子供を約80%カバーしています。また、1~3歳の子供をデイケアセンターに預けず在宅で育てる場合には、最大で年間約97万円強が支給されます。
このように日本では考えられない手厚い育児制度により、ノルウェーでは一時(2002年および2003年の)合計特殊出生率は1.80を切っていたが、2004年および2005年にはそれぞれ1.83および1.84まで回復しています。それに比べて、日本の合計特殊出生率は1990年1.54から2002年1.32, 2005年1.26までほぼ一直線で低下しており、日本の少子化は非常に深刻な状況にあるのです(人口問題研究 64-3, 2008. 9, pp. 122-129)。日本の少子化は、ノルウェーの育児支援制度に比べて極めて貧弱なことから当然の結果ではないでしょうか。
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