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2011/01/27

5. 日本の進むべき道 -小さな政府か、大きな政府か -

3) 小さな政府、米国の実態
3-10) 覇権国としての国力と底力

b) グリーン革命による食糧増産と食糧安保戦略
現在でも米国は世界一の食糧生産大国であり、世界最大の輸出国です。人口の爆発が止まらないこと、および地球温暖化による大きな気候変動に伴う全世界における食糧生産の減少による需給の逼迫が懸念されています。オーストラリア、中国、ブラジルや東南アジアなどで、地球温暖化との関係が深いとされている数十年に一度と言われるような大洪水や大干ばつが頻発しており、農作物の甚大な被害など、そのような現実がまさに起こりつつあるのです。
さらに、深刻な問題としては、米国の穀倉地帯では地球温暖化が進むにつれて降雨量が減少し、これまで以上に地下水のくみ上げが増加し、米国穀倉地帯に水を供給している巨大な地下水脈である「オガララ帯水層(Ogallala Aquifer)」の急速な枯渇が懸念されているのです。
米国は、グリーン革命によりこのような問題を解決しながら、食糧の増産と全世界への食糧供給を通して支配力を強めようとしているのではないでしょうか。この目標に向け、米国は独占状態にある最先端のバイオテクノロジー、その本命である「植物バイオ」を生かそうとしているのは間違いのないところです。これまで、バイオテクノロジーは医薬品開発などに応用されてきたが、バイオ技術の強みは「植物バイオ」、すなわちグリーン革命にあり、巨大なマーケットが期待される遺伝子操作(GM)農作物による食糧増産にあるのです。
米国は地下水の枯渇を避け食糧生産性を高めるために、世界のトップレベルにあり独占状態にある植物バイオにおける遺伝子操作(GM)技術を駆使して、少ない水で高収量なGM農作物を創製するであろうと考えられます。GM技術を駆使すれば、害虫や塩害に強い植物、砂漠に強い植物、高温や低温耐性の植物なども比較的容易に創製できるのです。事実、GM技術やGM植物の知的財産権を独占し、世界の主要作物の種子支配を狙っていると批判されてきた米サンモント社は08年6月、世界的な食糧高騰や気候変動に立ち向かう「貢献策」を公表しました。それによると、トウモロコシ、大豆、綿という主要農産物3品目について、2030年までに00年と比べて収量を倍増させる種子を開発し、その栽培に必要な土地、水、燃料の量を3分の1に削減するという野心的なものなのです(朝日新聞2008年7月20日付)。

米国から輸入される大豆の70~80%近くはGM大豆であり、日本はGM農作物の一大臨床試験場と揶揄されています。それにもかかわらず、日本ではマスメディアによる非科学的で誤ったキャンペーンに、無知な国民は踊らされ、GM作物およびGM穀物の根拠なき拒絶がなお強く続いています。当初、欧州でも日本と同様にその安全性が問題にされ拒絶されていたが、科学的に安全性が確認されるにつれてGM作物を受け入れつつあります。その結果、日本ではバイオテクノロジーの本命である植物を対象にしたGM技術やGM農作物作出技術は育たず、韓国、中国、シンガポールなどのアジア諸国と比べても低い技術水準に甘んじているのは極めて残念なことと言わざるを得ません。
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小泉構造改革の総括と日本の進むべき道 | Comments(0) | Trackback(0)
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