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2010/10/26

5. 日本の進むべき道 -小さな政府か、大きな政府か -

3) 小さな政府、米国の実態
3-9) 米国の悲惨な医療制度

日本でも小泉構造改革において、07年度から毎年増加し続ける社会保障費を毎年2,200億円ずつ11年度までにトータル1.1兆円削減し、11年度には財政のプライマリーバランスを黒字化することを策定しました。その結果、勤務医師の不足による地方の中核病院(主に公立病院)の閉鎖、産婦人科医の不足による妊婦の受け入れ拒否、救急患者のタライ回しなどが頻繁に起こり、医療危機を招きました。
それでは、小泉構造改革の手本とした米国新自由主義における医療制度はどうなっているのでしょうか。米国には、日本国憲法25条「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」というようなものは存在しないため、オバマ政権は2010年3月、国民皆保険制度を実現することになる医療制度改革法案を成立させるまで、米国は先進国の中で唯一、国民皆保険制度(公的医療保険制度)がない国であったのです。したがって、米国では国民は個々人が民間の保険会社あるいは組合・団体の提供する医療保険に加入する必要があります。
米国の民間医療保険は、日本の公的保険における「本人・家族ともに自己負担は3割」と固定されたものではなく、家族構成や収入に応じたプランを各人で組み合わせて加入するのが特徴で様々の選択肢があり、その保険システムは極めて複雑であるとされています。医療保険には「医療保険」、「歯科保健」や「眼科保険」などの種類があります。
米国にも公的保険制度というものがあり、一部の国民に限って、例外的に公的保険制度が適用されるようになっています。それは、高齢者を対象としたメディケア(Medicare)と低所得者を対象としたメディケイド(Medicaid)と呼ばれているものです(朝日新聞2008年7月26日付)。
[メディケア]
①運営母体:連邦政府
②受給対象者:a) 65歳以上の人、b) 身体障害者(年齢を問わず)、およびc) 慢性的な腎不全患者(年齢を問わ        ず)
③創設年:1965年の社会保障改正法で創設され、1966年7月1日から施行
④保証内容:入院保険(主に病院・医療機関に対する保険)
      医療保険(主に医師に対する保険)

[メディケイド]
①運営母体:州政府と連邦政府の共同運営
②受給対象者:a) 65歳以上の低所得者、b)年齢を問わず身体障害を有する人
③創設年:メディケアと同様、1965年の社会保障改正法で創設
④保証内容:基本的にはメディケアでカバーされない各種医療費をカバー

米国は最も進んだ医療先進国であり、お金があればどんな高度な医療でも受けることができます。日本から臓器移植の必要な患者が渡米して移植治療を待っているニュースが度々報道されていることからも、米国には最先端医療があり、高度医療が受けられ得る社会であることは疑う余地はありません。さらに、米国には高度医療を支えるファイザーやメルクなどの巨大な製薬企業が存在し、世界に先駆けて新薬開発を活発に行っており、米国は新薬開発においても世界をリードしています。
しかしながら、米国はカネがあれば、最先端の高度医療が受けられる社会であるものの、カネのない国民の医療制度においては、世界で最もコストがかかっているにもかかわらず、その質は先進国の中では最低レベルにあることが民間団体の「Commonwealth Fund」の報告書(2008年7月18日)で明らかにされています。それによると、米国の医療制度は非効率的で「他の先進国に比べ、医療費に1人当たり2倍のコストがかかっており、しかも医療費は所得を超えて増大し続けている」と指摘しています。米国で死亡率の高い心臓発作における治療が、この分野のトップであるフランスや日本と同じくらいの死亡率の低さを実現しておれば、最大101,000人が死ななくても済んだ可能性があること、また米国の乳児死亡率は先進国の中でも高いことが指摘されています。
このように非効率的な医療が行われていることもあり、連邦政府のメディケアおよびメディケイドを中心とする公的医療制度にともなう医療費は7,968億ドルで国防費5,526億ドルを上回る最大の歳出項目になっており、非常に大きな負担になっているのです。さらに、米国の医療保険制度の最大の欠陥は人口の15.8%を占める4,700万人もの医療保険未加入者が生まれているところにあるのです(富士通総研「オバマの医療改革の行方」2009年3月2日)。08年9月15日の老舗投資銀行リーマン・ブラザース倒産に端を発した本格的な米金融危機の発生、その実態経済への波及による大不況と大規模リストラ(53万人)により、さらに無健康保険者が増加していくことが懸念されているのです。

米国の医療制度は非効率的であることは、OECDのHealth Data 2008 (June 2008)報告によっても明らかであり、米国では高齢化率が12~13%であるにも関わらず、そのGDP当たりの医療費の比率(%)はOECD加盟国の中でも際立って高い上昇を示しており、2006年度には15.3%に達しているのです。これに対して、少子高齢化が進んでいる日本では、2005年度には高齢化率が20%近くであるのに、GDP当たりの医療費の比率は8.2%と先進諸国の中で最も低く抑えられているのです(日本政府は、毎年の医療費増大により国の財政が破たんすると喧伝していたが)。ちなみに、ドイツ、フランスおよびスウェーデンでは、2006年度の高齢化率はそれぞれ19.5, 16.5および17.5%であり、GDPに占める医療費の割合はそれぞれ10.6, 11.1および9.2%となっています。これらの数値からも明らかなように、米国の医療制度は国民皆保険でもなく、社会保険の範囲が小さく、民間保険と医療機関の相互の競争など市場原理主義をとっているにもかかわらず、医療費コストが世界一高く、その高騰に悩まされているのが実態なのです。数々の医療システム改革にも関わらず、貧困層への医療供給は制限され、平均寿命も先進国の中で低い状態に追い込まれているのです。医療制度システムまでも、市場原理による競争を持ち込めば、市場メカニズムにより経済合理性が達成され、医療費が抑制されると考えているようですが、上記のように米国の医療費コストは世界一高く、極めて非効率であることがわかります。そもそも命を左右する現場に市場原理主義を導入すること自体に誤りがあるのではないでしょうか。このような米国の悲惨な医療格差を是正すべく、民主党オバマ政権は2010年3月、国民皆保険制度を実現することになる医療制度改革法案を成立させたのです。

<小泉構造改革(米国新自由主義導入)による日本医療の疲弊>
一方、日本はGDPに占める医療費の割合は先進諸国の中でも最も低く、効率的な医療が行われていたにも関わらず、小泉構造改革では社会保障費(医療費を含む)の増加は国家財政を破綻させると無知な国民を騙して、社会保障費の増価分を毎年2,200億円削減し、平成11年までに1.1兆円の削減を決定しました。また、高齢者の医療費の削減を目的として75歳以上の高齢者や身障者らを対象とした「後期高齢者医療制度」」の導入を強行採決したのです。
上記のように、日本は非常に少ない医療コストで世界一効率的な医療を提供し、世界一の長寿国を達成しているにもかかわらず、小泉政権を含め自民党政権は国家財政破綻などと国民を騙し続けて、生活や医療を含む社会保障よりも先進国の中で最もGDP比率の高い公共事業や道路建設優先の利権政治を続けてきたのです。また、米国を真似した小泉構造改革は格差を拡大し、貧困率を高め、医療危機を招くなど、多くの「負の遺産」を残しただけなのです。
日本国民は小泉構造改革が目指した、このような米国流新自由主義経済社会を本当に望んでいたのでしょうか。日本人はほとんどすべての物事をその場の空気や雰囲気、今はやりのKYで判断する傾向が強く、たとえばその典型的な例があのマスメディアが作り上げた「小泉劇場」なるものであり、多くの国民はこれにうまく踊らされたのです。
日本人が振り込め詐欺にかかりやすいのも深く考えて行動することを苦手とする民族の特徴が現れているのでしょうか。日本人は政治に対する民度が低く、不正、不公平、被害に対しても声を上げることもなく、お上の言うこと、長いものに巻かれろと我慢するだけなのです。政治家や官僚はこのことをいいことにして不誠実な政治、行政を行っており、一向に改まらないのです。
今後の日本の教育に求められるのは、コンピュータにもでき、それには絶対かなわない丸暗記の教育ではなく、答えがない課題、問題に対する論理思考力や創造力および意見を発信し、行動できるような自己確立に向けられるべきではないでしょうか。
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小泉構造改革の総括と日本の進むべき道 | Comments(0) | Trackback(0)
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