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2009/06/29

2. 小泉構造改革による社会経済システムの疲弊と崩壊 -2) 社会の緩衝能(包容力)・安全弁の崩壊 (3) 無差別殺傷などの凶悪犯罪の増加

「世の中が嫌になった。生活に疲れてやった」、「人を殺したかった。誰でもよかった」との供述による無差別殺人や未遂事件が増加しています。
昨年までの10年間に67件起きているが、主なケースとしては、東京・池袋の路上で、23歳の男が買い物客ら8人を包丁で刺すなどし、2人を殺害した池袋・通り魔殺傷事件(99年9月8日)、山口県下関市のJR下関駅に35歳の男が車で突入、通行人15人を襲い、5人を殺害しました (99年9月29日)。男は、その動機として「何をやってもうまくいかず、社会に憎しみや恨みを抱くようになった」と供述しています。

最近では、08年3月に茨城県のJR荒川沖駅で、24歳の男が8人を殺傷しました。凶行に及んだ理由は未だに不明であるが、「死刑になるために人を殺した」、「誰でもよかった」と供述しているように、無差別殺傷事件というべきものです(朝日新聞2008年3月25日付)。
また、衝撃的な凶悪事件として、08年6月8日、25歳の男が歩行者天国で賑わっていた秋葉原の電気街の路上に2トントラックのレンタカーで突入し、タガーナイフで通行人17人を無差別に襲い、7人を殺害しました (朝日新聞、読売新聞 2008年6月9日付)。
このように、若者による凶悪な無差別殺傷事件が立て続けに起こっているのは、尋常なことではなく、現在の日本社会に巣くう社会的病理を反映していると言わざるを得ません。
前者の事件の容疑者は、高校時代の遅刻、欠席は3年間で各1回と少なく、まじめに努力する人物のようであったが、一方では「弱気そうな反面、キレやすい性格」の持ち主との見方もあったようです。男は学業に意欲を失い、大学進学をあきらめて、就職すべく地元の企業に応募したが不採用となり、その後は全く定職に就くことはなく無職だったとのことです。
一方、後者の容疑者の男は青森県出身であり、関係者らによると小中学時代は成績優秀であっつたが、県内でも有数の進学高校に進んだものの、成績は中程度だったとのことです。
自動車関連の「専門学校(短大)」を卒業後、定職に就けずに07年11月大手派遣会社の面接を受けて登録し、みずから応募した静岡県内の自動車部品工場に同月から派遣されて組み立てや塗装をしていました。容疑者の同僚は「普通に好かれるタイプだったと思います。まじめで、誰に対しても同じように接する」、また大手派遣会社の担当者によれば「おとなしく無口だが、まじめに働いていた。事件を聞き信じられない」と話しており、その勤務態度は驚くほど真面目で、性格も普通人そのものであったようです。ところが、この事件を起こす前の5月30日、派遣先から6月いっぱいでの解雇を通告されました。その後、解雇は撤回されたようですが、当人は職を失う不安があったとのことです。一部報道によると、6月5日朝に出勤した時に、「自分の作業着がない」と激怒し、そのまま会社に来なくなったということです(読売新聞2008年6月10日付)。

この二つの凶悪な無差別殺傷事件の容疑者の共通点として、①低学歴、②無職、非正規社員、および③生真面目であるが、キレやすい性格などがあります。特に、注目すべきは、事件を起こす前に、後者の容疑者は携帯ネットにみずからを「負け犬」、また「勝ち組の皆を殺したい」と書き込んでいることです(四国新聞2008年6月12日付)。
日本の弱肉強食社会を大々的に煽っている週刊誌やマスメディアの評価に従えば、これらの容疑者は競争社会における「負け組」に該当することになるのでしょう。しかしながら、現在、ワーキングプアやネットカフェ難民など、「負け組」で年収が200万円以下の貧困層とよばれる貧困層が4人に1人に達している現状において、競争社会が生んだ「負け組と貧困」が凶悪な無差別殺傷事件の誘因の一つであるとしてもすべてではないことは明らかなことです。
小泉構造改革以前は、非正規社員は6人に1人であり、ほとんど正社員で、かつ終身雇用でした。このような時代では、労働者は計画性をもって将来の夢や希望を実行でき、未来に明るい展望を持つことができました。しかしながら、小泉構造改革によって断行された04年の労働者派遣法の大幅な規制緩和により、多くの製造業で正社員の非正規社員化が大々的に起こり、不安定な雇用環境が定着したのです。
小泉構構造改革は、このような不安定な雇用環境をもたらし、若者が日々生活に追われ、将来への夢や希望を持てない、不安感だけがつのる社会を形成したのです。
事実、秋葉原の事件では、逮捕後、男がトラックを使った派遣勤務先の工場の入り口封鎖計画が実現せず「対象をよく通っていた秋葉原に切り替えた」と供述していることがわかり、警察ではリストラされると思い込むなど、仕事への不安や不満が事件のきっかけの一つとなったとみています (朝日新聞 2008年6月16日付)。
このような将来に夢や希望を持てない、不安感だけがつのる社会の形成が、凶悪な無差別殺傷事件を誘引した社会的背景の一つと考えられます。
さらに、小泉構造改革が実現した弱肉強食社会における実力主義、成果主義(評価できない無能力上司、もともと客観的評価ができない日本社会では本来の成果主義なるものは機能ぜず、その導入は失敗に終わっているが)のもとでは、日本企業の特徴であった職場のチームワークだけでなく、同僚間や上下間のコミュニケーションも阻害され、労働者個々がそれぞれ孤立した状態に置かれているのです。すでに日本社会では、核家族化に加えて地域社会の崩壊が起こっており、ネット社会でのバーチャルなコミュニケーションはあるものの、現実社会では職場だけでなく居を構える地域社会でも孤立した状況に置かれているのが実態なのです。
このように絆の切れた、包容力のない社会が自殺者の増加だけでなく、一方では社会の安全弁をも崩壊させ、自暴自棄による、このような凶悪な無差別殺傷事件の発生に繋がっているのではないでしょうか。
秋葉原の無差別殺傷事件をめぐり、当時、舛添厚生労働大臣は派遣労働制度に触れ、「大きく政策を転換しないといけない時期にきている。働き方の柔軟性があってもいいという意見があるが、なんでも競争社会でやるもがいいのかどうか。安心して希望をもって働ける社会に舵を切る必要がある」と語っています(朝日新聞2008年6月10日付)。

麻生内閣は民間の有識者による「安心社会実現会議」を立ち上げました。最近、その会議報告書として「安心と活力の日本へ(概要)」が発表されました。しかしながら、真に安心社会を実現するには、現在、直面している希望の持てない、不安な社会をもたらした小泉構造改革を総括することが先決ではないでしょうか。

またまた、心配されていた同種の無差別殺傷事件が大阪此花区のパチンコ店放火により発生しました(09/7/5)。容疑者による「世の中がいやになった。誰でもよかった。社会が悪い」という供述からも明らかなように、この事件もJR荒川沖駅や秋葉原での無差別殺傷事件と共通した社会的背景により起こったものと考えられます。
この種の事件の発生を抑えるためには、小泉構造改革を総括し、一日も早くその歪の解消に取り組む必要性があることを今回の事件も示しているのではないでしょうか。
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小泉構造改革の総括と日本の進むべき道 | Comments(0) | Trackback(0)
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